甦る過去の記憶

あれば数年前の話である‥




もうすぐやってくる!
あ~ワクワクすると時間がたたね~
でも一緒に歩んだ30年間寂しいなあ
と呟く親父

聞いていないふりをした俺は心の中で 
たかが元号が変わるだけじゃねーか

そりゃ元号が変わって困る人はいるかもしれないよ  俺自身はミジンコのように微塵にも影響はない(実際ミジンコより塵の方が細かい) カレンダーや手帳は?別にええやん そのまま使えば

そんな平成の余韻に浸ってる親父はビールに浸りながら 平成最後の大晦日 除夜の鐘を撞きに行かねーか! よし行こう と一人で思いつき一人で決断した

いやいや誰もまだ返事してねーし

早速親父は親戚たちに連絡をした

あ もしもしあのさ 明日嵯峨の二尊院ってとこで しあわせの鐘を撞きに行くんやけど…ん?もう充分幸せ?  鐘撞いてどないするって?いや鐘を撞いて煩悩をやね ぼんのうを… そ、そうか 忙しいもんな じゃあ


あのさ二尊院ってとこで… ん?寒い?いや暖かい格好すればええやん 甘酒やホクホクのさつまいもとかも提供してくれるねんで
無料で!紅白みなあかんから無理?そ、そうか じゃあ仕方ないな 


かわいそうにおもったか ばあちゃんと親父の弟夫婦は🆗の返事をくれた

俺の家族はお兄がくるくる回転する寿司屋のバイトがあるため行けなかったが 俺と母 は渋々参加した

晦日当日の19時 に集結俺を含め総勢6名
7人乗りの車で二尊院へいざ!

車で一時間も掛からないので 途中の居酒屋でお酒を飲みながら時間潰し まあ盛り上がってるのは周りの客と親父だけ すっかり調子こいた親父は ここの居酒屋はな蕎麦を提供してくれるんやで 年越し蕎麦食おうやないか! なに蕎麦にする? 

このざわついた居酒屋ではっきり聞こえた
親父以外 いらなーい と
       
賛成した親父の挙げた手は引っ込めることなく店員を呼ぶ手に変わった

狐につままれた表情をした親父は
き、きつね蕎麦 ひとつ と注文した

蕎麦を食べて気を取り直した親父は
さあ いよいよ 除夜の鐘を撞きにいこうじゃありませんか!と1人はりきり
車へ乗り込んだ 

二尊院に着いたのは始まる一時間前 門が閉まっている 

皆は    やってないんちゃう?


あははは  俺は一度来たことがあって
毎年開催されているのは知っているんやわ
しかも ぐぐって 調べてあるから大丈夫やわ安心せい   23時45分開始やから まだ開かんやろ ほら人も増えてきたで~

でも 帰ってく人もおるで と叔父がいった

心配性やな 皆さん待てへんから暇潰しにどっかウロウロしとるんや
これも平成最後の除夜の鐘!我慢じゃ ちょっと待ったれい
 
さあ23時43分や開門するでICOCA
はい45分なった!

闇のなかだけに 静まりかえっている
し~ん とも鳴らない

あれぇ 時計狂てる?

ばあちゃんが脇にある小さな門にある貼り紙をみて あんた去年から中止って書いてあるわよ

 
なあ親父 俺には聞こえていたぜ  
心の鐘が! 

ち~ん とね


帰りの車中の小さな画面で紅白歌合戦をみて年を迎えました 

おやじはまだ知らない 平成最後は5月ということを…


  

成れの果て‥

携帯電話がけたたましく響く

 僕は布団の中から手を伸ばし

 手探りで携帯電気を探した

「なんやねんこんな朝早くから!」

時計の針は午前6時だ

出勤のため起きるのは7時

まだ一時間も寝れたのにと思った        
だが親戚や離れて暮らす親に何かあったのかもしれない!

私の鼓動が強く叩かれた

「もしもし‥」


「おー タニか  落ち着いてきいてくれ」

     「はあ」

 でた!先輩や!電話を話して
深いため息を吐く 

はああぁぁ~ 


なんかぶつぶつ一人で喋ってる

ひとまず鼻がムズムズするから
ティッシュを取って 鼻をかんだ
ゴミ箱にポイっと投げたけど
外した 2. 3歩ほふく前進して
ゴミ箱に入れ直した そしてほふく後退して 携帯電話をとった

「すいませ~ん 先輩~い 聞こえますか~ もう一度お願いしま~す」と白々しく電波が悪い風に言う

「で?」と聞こえるか聞こえない位小さな声で言った


先輩「この事は誰にも内緒にしてくれ」

     「はあ」

「実はなおかんと揉めてな ドライバーで刺してもうてん」

     「はあ」

「せやから 今日は会社いけへんねん」

この人また当欠 まともな言い訳でけへんのか

てかあんたのお母さん数年前に亡くなったやん

   「それで…?」

「まあ 驚くのも無理あらへん まあ心配すな 明日はいくさけ その時話すわ」

「また 会社に休むって言っておいたらいいんですね?」

「そやな たのむわ あの社長朝はやく起きてるはずやのに電話
でよらへんねん」

 普通だったらあり得ない

すぐ首になる

朝出社 うっとこの社長は店の鍵もってるから 毎朝必ずいる
「おはようございます あの~
⚪⚪先輩が‥」

社長「ああ 知ってる」

俺「電話でないと‥」

社長「なんで でなあかんねん
ですぷれいで名前見たらわかるやんけ!くそがあ!忙しいっつうねん」

あくる日

先輩は何事もなかったかのように出社 

タイムカードを押す

ジーガチャコンと

社長「お前ええ加減にせえよ!もう呼んだらへんぞ!」と怒る

上目づかいで「もうしません」
と先輩
  
このやり取り 10年位やっとる

小さい頃から社長に世話なっとる

先輩「あいつ俺を首にしよらへんねん 俺のこと好っきなんやであいつ きもいなあ」と

   高をくくっている 

そんな彼は今 牢獄に入っている‥

酔っ払って路上で寝る→通報で駆けつけた警察官に声をかけられる→誰じゃ触んなと 振り払う→警察官の顔面に肘鉄あたる 

  罪名 公務執行妨害
  

俺の回りは敵だらけ

永遠のライバル 雑草抜き

これは家を持つ人の宿命と言っても過言ではない

うちの場合3時間かけて雑草抜いて 綺麗になったと思っても 

3日経てば ちょろっと芽が生え

  その芽を睨み付ける

1週間経てばみるみる増え

  舌打ちが始まる  ちっ!

一月経てば 文句がでる

    くそっ! 草っ!


  それ以降 元通りになり
 
  絶滅したらエエのにと思う



こんなことを年に3度
懲りずにコリン星のゆ~こりんみたいに20年間も戦っている

カラスも俺が必死で雑草抜きをしている姿を見て 暴言をはく
「あほ~」と‥

俺の背中にその言葉が突き刺さった
俺は痛さと怒りで武者震いが起こった

俺も我慢の限界 鋭い矢を放った
「なに見とんねん!」と‥

殺気を感じたのかカラスは「あほ~」と言いながら飛び立っていった

視線を下に戻すと隣のおっさんと目があった  一瞬 二人は-273度の世界にいるように固まった  時をも凍らせるから凄い

軽く会釈して隣のおっさんはトトロのように家の中に入って行った

小さな芽が生えたら♪ 秘密の暗号
森へのパスポート♪ 素敵な冒険
今はじまる♪  となりのトトロ
♪ トトロ ♪トトロ トトロ♪


つづく‥



つづき

そりゃ20年間も同じ作戦で戦ってきたわけではない さまざまなアイデア商品のアイテムを駆使したさ

鍬で雑草と土ごと引っ掻いたり だが根っこからとらないとすぐ生えてくる
しかも土も一緒についてくるから
ゴミが重すぎる

土を入れ換えたこともあるわさ 
コーナンで大量に土を購入して重たいしんどい思いしてな!
しばらく効果はあったが 新たな問題
それはのら猫の存在だった
この砂はのら猫の たまちゃん(仮名)が
う⚪ち をするには最高のロケーションだったのだ  これはだいぶ臭い
う⚪ちの度掬い上げ 臭いを薄めるため水を巻いた  ある時俺が休みのとき部屋から外を覗いた すると
たまちゃんがたまたま 
う⚪ちをしている最中ではないか! 俺はすかさず
ゆっくりと カーテンと窓を顔が出るくらい開けた 俺には気づかない
普通は敏感な猫のはずだが
余程我慢していたのであろう 
全てに開放されたかのような至福の表情をしていた

俺は思い切り息を吸って 
「なにさらしとんのじゃあ!」と言おうとした が俺は一旦冷静になった

「ふっ 猫に我々の言葉なんてわかるわけがない」と‥

俺は貯めていた空気を静かに吐き出した そう ふぅっとね


俺はスーパーサイヤジン のように髪の毛を逆立て ゲゲゲの鬼太郎猫娘のように目ん玉を細~く変化させ
もう一度 魔神ブウみたいに大きく息を吸い込んだ  準備は整った 

 俺は今までのうっぷんも含め

     猫語で 叫んだ


   「しゃああぁぁぁぁぁ!」


びっくりしたのであろう 何処かに
消えた 勝った 勝利したのだ

俺は思う これが本来の意味だろう

      ネコババ



俺は この砂作戦も廃止した何故なら効果はなかったからだ

俺はついに薬品に手を出したのだ
出来ることなら使いたくなかった 

何故ならちと高いからだ だがしぶしぶ   
 除草剤 生えてコナーズ(仮称)

を購入 

もちろん母ちゃんの承諾を得てからだそうでもしないと二次災害が起こるからだ(黙って買うと口撃される)

    3分で散布した‥


結論を言おう ま~~ったく効果ありませんでした

俺は最終手段に出た それは
人工芝だ 本物のように見える
人工芝だ それを張るまえに 防草シートを張り巡らせた そしてその上から人工芝をひいた
 
するとなんてことでしょう 雑草が激減したのだ  


芝を張ってないところは依然雑草を抜かなくてはならない 前回の草引きに
少し気がついたことがある
うちの場合 四種類の雑草がある

それが入り交じってるわけではない
それぞれの種類の雑草がかたまって
生息している

ただの偶然やろとおもう  

今回も同様雑草を抜いて見たがやはり同じだった

これは土の問題なのだろう とおもったが   土の種類は同じだ


日光のせい?  あり得るかもしれない

日光のせいでなかったとする

何故 同じ種類の雑草が生えるのか


人も同じコミュニティが存在するのか?


仮説を立てた

始め四種類の雑草の根が混在する
だが一つの種類だけ多くの根が存在した 多勢に無勢で多い方がその領地を獲得する 他の根っ子はそいつらに栄養をすいとる あるいは強い種類の雑草がいるかもしれない
その強い種を特定し
いや特定しなくてもいい

その雑草に遺伝子を組み換えることができれば  根っ子だけしか生えないように‥

そして遺伝子を組み換えた雑草と土を混ぜた奴を販売する もう雑草は生えることができない

今簡単に遺伝子を組み換える?DIY バイオがあるらしい

それが成功したら億万長者間違いない ノーベル賞もんや!

甘えた声で「ママ~ バイオキット買っていい~?」


嫁「あかん!」

「‥‥‥‥‥‥‥。」


雑草退治するよりもまずこの鬼嫁をなんとかせねば‥‥。








   

いや あなたは太陽のようだ

いかつい先輩との再開

先輩「おい われ! 久しぶりやないけ!元気しとったんかいな!」

俺「久しぶりです!」

先輩「お前 ずいぶん髪型変わったのお」

俺「はい 先輩は変わらないですね」といつまでも若いってことの意味で言った‥

だが先輩はタコ見たいに顔全体が赤くなった

先輩「われ なめとんか!わしは変わらへんにきまっとるやないけ!わかってて ゆーとんのか!お!」

『しまったあ この人ハゲで天然スキンヘッドやった!ほんまや変わる訳ないがな!』


もう会うことはないだろう‥



皆さんくれぐれも言葉には気を付けて

ひらひら蝶に舞う

      朝カーラジオで鶴瓶

  「買わない理由はないやろ」と言っていた

  ハロウィンジャンボ宝くじのコマーシャルだ

    私は心の中で「そうだ そうだ」

  

  だが私はくいしばる歯とハンドルを強く握った

  そう私の家は貧しく宝くじを買う余裕もない

  私の給料では到底買えるものでもなかったからだ

  私は不甲斐なさから気持ちが落ち込んだ

「あ~あ 臨時収入でもあればいいのに…」


 

 私は急いで現実に戻り いつものように

いつもの仕事をこなしていた


勿論 ハロウィンジャンボ宝くじの事はすっかり忘れていた


私は運搬会社に勤務しているため 色々な場所へ配達に行く 私は駅前の高級マンションへ配達するため 車を停めた 私が中に入りオートロックの前のドアホンナンバー1010を押した


可愛らしい女の声がした 子供ではない

大人の声だ 察するに 30代半ばかもしれない

可愛らしいの声だが上品な口調だった

  解錠された自動扉が開いた 私は中に入り

エレベーター10階のボタンを押した

私は1010の部屋へと進んだ


たどり着き1010号のドアホンをもう一度押した


あの人の声と年齢、雰囲気は私のイメージとあっているのかが気になった

 そしてドアが開いた 旦那らしき人が出てきた

髭をはやし ラフでグレーのスウェットを着ていた 


   その男と私はお互い目を見開いた


       驚いたのだ


「磯谷さんじゃないですか!どうしてここに?」


     私は笑みをこぼさず言った


この先輩は10年程前 忽然と私の前から姿を消した


    そうちょっとした恨みがある


 「久しぶりじゃないか 元気にしていたか?
お前には連絡をいれたったが 電話も何もかも失ったからな」


先輩はいけしゃあしゃあと話した 私はそんなことよりも貸した5万円を返して欲しかった

だが私の口からは言えない おそらく彼は貸した5万円のことなんて忘れている 私は当時独身だったせいもあり お金はある程度自由に使えた

     そして先輩に5万円を貸した

  もう一度言う 私はこの男に5万円を貸した

 私はこれ以上 平静の表情を保つのに限界がきた

「先輩 もう少し話したかったのですが 仕事が押しているんで」と荷物を手渡し帰ろうとした


「おい ちょっとまて」と先輩が私を呼び止め家のなかへ入って行った

【缶ジュースでも取りにいったのか? そんな子供騙しのようなものなんていらない かねを返せってんだ】

手に持ってきたものはOAK BARKの長財布だった

私に見えるように財布を広げた みた感じ恐らく100万円は入っている 10枚ずつ別けているのだろう ひとくくりに されている この人は私にだけではなく色々な人に金を借りていた 巧みな話術によって 

     そして忽然と姿を消した

どうやったらこんなになるのか だがそんなことはどうでもよい 借りた金が戻ってきさえすれば…


私の頭の中はウルフルズの借金大王の音色が聞こえてきた


♪貸した金返せよ~♪

貸した金返せよ~せよ~せよ~♪♪



「前に借りていた5万円 悪かったな」と10枚くくりの束を取り出した そのうちの5万円を私に差し出すものだと思った


 私はよだれをたらたら流して餌をまってる
ワンちゃん みたいな仕草を出さないようにした


  先輩はひとくくりの10万円を私に差し出した

      利息分だ取っといてくれ」

      私は表情には出さないが 

心の中はワンちゃんが嬉しさのあまりオシッコしてしまう 嬉ション してしまうところだった


    だがすこしばかり ちびった 


 私は「いいんですか」とそれを受け取った


私は次の配達先へいかなけれはならずその場所をたちさった…


 私は車の中で 「よよよよよっしゃゃゃあい!
返すのはあったり前田~!」

  と叫んだ  テンションMAXというやつだ

      (あげあげともいうらしい…)


早速妻に「あ、ママぁ 10万円ゲッチュしたど! 今夜はスッきやの ぎゅーどん たべまくろうぜっ!」と電話を切った

  私はたまらなく嬉しかった 最高だった


       私は早速お札を数えた

「い~ち に~ さ~ん よ~ん 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 」

     何度か まばたきをした

「ん? あ~疲れてんのかな?目が霞んで見える」


    目の体操をして もう一度数えた

 「い~ち に~ さ~ん よ~ん123456789

10」

   顔中にある シワ が眉間に集中した


もう一度数える 今度は慎重に 指をペロペロした

 「い~ち に~ さ~ん よ~ん123456789
10」



         14枚…


よんを過ぎたあたりから 人物が変わっている


 諭吉 諭吉 諭吉 諭吉 英世 英世 英世

 英世 英世 英世 英世 英世 英世 英世

    諭吉が4人 英世が10人…


 私は窓を締め切っている車内で大きく叫んだ


   「だあああぁぁぁぁあああぁぁぁ」


危険を察知したのか私の声で道端で餌を啄む鳩が驚き一斉に不規則な方向で飛んでいった


チャリンコに乗ってるじいさんも ふらついた


散歩しているチワワも失禁しながら私に吠えていた


  それほど叫んだ 喉が潰れたかもしれない

 私の顔も福笑いかっつうくらい  顔が歪んだ

        目に涙が溢れた


        私は色々考えた


先輩のとこにもう一度行き 足りないですと言うのか それとも 先輩にふざけてるのかと文句を言うのか どちらも行けなかった

肩を落とした 障子の紙ように薄ぺらい心に穴が開いた  私は 無 を経験した


ふと我に返ったときは 何件か仕事をこなしていた 無意識にだ  どこをどう通ってきたのか どう客と接したのか わからない


  新しい配達ルートだったこともあったのか

  脳指令部が私を正常な回路に戻してくれた

新しいルートを通るため 右にハンドルを切った

   今までこの道はを通ったことはない

     しばらく走れば四つ角がある

「おや?こんなところにスーパーがある 目立たない場所だが客の出入りは多い」


    コーナーには宝くじ売り場がある 

    何人かが宝くじを購入している

「そんなん 当たらん 当たらん」とディスった

  私はそのスーパーの角を右に折れ 進んだ

つと 私は朝のコマーシャルのことを思いだした

【買わない理由はないやろ ないやろ ないやろ】と…


    私はちょうどお金を持っている


       「少しだけなら…」


     私の天使は止めようとした

    しかし私のデビルマンが一蹴した

  【弱ええくせにでしゃばんじゃねえぞ!】



 私は一周して車を宝くじ売り場の近くに停めた


    ハロウィンジャンボは本日までと 
  広告の のぼりが翩翻(へんぽん)と翻っている


車のディジタル時計をみやると12時00分を回ったところだった 


「そういえば売り場は昼になれば閉まっていたような そうだよな 閉まっているよな 買うなってことか…」 

その宝くじ売り場の後ろ側に車を停車させたため

   店が開いているかどうかはわからない

一応確かめるため車から降りて売り場に向かった


       なんと店が開いてる

 「宝くじは買えますか?」と恐る恐る聞いた

      「ええ」とおばさんが言った

「昼休憩しようと思ったのでは?」と遠慮気味に聞いた

おばさんは「いいえ うちはずっと営業してますよ」

  「じゃあこのハロウィンジャンボの…」

バラじゃない方を購入したかった だが連番と言う言葉がどうしてもでてこなかった

やむなくおばさんに「バラを10枚ください」と言った

「後8枚しかないんです 連番ならあと20枚あるんだけどね」

「じゃじゃあ 連番を10枚下さい」と3,000円を差し出した

  「当たりますように…」とおばさんがいった

    恐らく決まりきった文句だろう


だが私は「はい あたりますとも!」と今まで他人には見せたことがないほどの自信に満ちた表情と笑顔で答えた


 私は車に乗り込み 次の配達先へ車を走らせた

その売り場にはもう一人の若い男性が宝くじを求めている

   その時は気にも留めていなかったが

    100メートル程進んだあたりから

何故か胸騒ぎがした さっきの若い男が最後の

ハロウィンジャンボ10枚を購入し 1等当選する光景が目に浮かんだ 【しまった もう10枚買えばよかった】自分のせこさに腹がたった


 気がつけば もとの売り場に車を停めていた

私は何かに取り憑かれたように 売り場にたっていた おばさんは少し驚いた表情をしたが

  すぐさま「いらっしゃい」と微笑んだ

「ま、まだ10枚 ありますか? ハロウィンジャンボまだかえますか?」


「はいまだありますよ はいこれで売り切れです」

 あの男はハロウィンジャンボをかっていなかった

私は勝利を確信した 天は私を見棄ててはいなかった 宝くじにキスをした

    それから私の心は穏やかだった

   私は家に戻り妻にその経緯を話した

 私はいつになく饒舌だったしかも上手に話せた



嫁はんに 怒られた こっぴどく怒られた しつこ~しつこく怒られた 体に穴が開くほど睨まれた レーザー光線でもあてられているように…


 パンツと靴下の穴はこいつのせいだと思った


       男は夢を追いかけ


       女は現実を見る


   せやけど そないに 怒るか?



【今にみてみろ!偉そうにしたことを後悔させてやる!】



   

  発表当日 宝くじをテーブルに広げた


ゴルフの芝の目を読むように宝くじの配置を調えた 室内だからか無風だ 【よし いまだ!】
スマホで当選確認をした



一時的ではあるが視力と聴力そして筋力ともに
失った



 私の頭の中は小田和正の歌が舞い降りてきた


もう♪終わり~だね~♪  さよならさよなら♪


さよなら~あ~あ~♪




   私はいつしか意識を取り戻していた 


        私は思った


男はこの時点で初めて現実というものを理解する


  そしてすぐ忘れる アホな生き物である




ここで一句


ハズレ くじ お金は 二度と 戻らない


         廃人   運 内蔵


 

足長おじさん

     俺は普段温厚だと言われる


 だが身を守るためには仕方のない事だった


 こいつは痛みと苦しみからなのか 悶絶している


 そりぁ 勝手に入ったことは悪かったと思う


 窓が開いていたよ またとないチャンスだからな


    存分に甘い汁を吸う良い機会だ


  俺には絶対の自信があった 捕まらないと…


   しかしその おごりが 俺を苦しめた


  俺にとって前代未聞の出来事が起こった


 俺は窓から侵入した 人がいようがいまいが

お構い無しの俺だが この日は少し疲れていたこともあり 目の前の座布団に身を寄せた あまりにも気持ち良かった 俺はうとうとしていた


   そうとも知らず奴が俺に忍よった


    俺は苦しさと驚きで目が覚めた

       「しまった!」
    
      だがもう既に遅かった

   俺の体は身動き一つ取れなかった

 俺が持っている武器も押さえつけられ使えない

      ジタバタも出来ない

  意識が薄れていくぼんやりとした目の先には

とてつもなく大きな人物だ 夏場と言うこともあり 暑さが息苦しさを増幅させ しかもこの男のぬるっとした汗と体臭で鼻を突き刺した

  【こんなやつに太刀打ちなんて出来ない】

【俺はこのまま圧死するのだろう 仲間達よ 今までありがとう 皆の負担にはなるが俺の分まであの人のために頑張ってくれ…】 

   俺は既に涙と言うものをうしなっていた

    ただじっと死を待つのみだった

 昼間のはずなのに ぼんやりとし暗くなってきた

    外の色々な音も小さく聞こえる

   俺の体はなんだかふわふわしてきた

 【やっぱり もう少し頑張りたかったな…】

 と今更ながら 命乞いかと 笑みを浮かべた


      すると天に届いたのか

    奴のからだが少し浮いたのだ
   
   俺に再びチャンスが巡ってきた 

  薄れ行く意識の中 俺は渾身の力を込め


        奴を突き刺した 

  できることなら 突き刺したくはなかった 

     だが仕方のない 選択だった

 深く刺せなかったのは たまたま(玉玉) なのか 

    本能が躊躇させたのかはわからない


    奴は のたうちまわっている

      もがき苦しんでいる

       形勢は逆転した

俺はありとあらゆる体の機能が回復しているのを感じた


    奴は携帯電話で助けを呼んだ

   【呼べばいい 早く助けてもらえ】

  警察だろうが何であろうが私は捕まらない


       怪人20面相?

   
  申し訳ないが その上を遥かに越える  

      ばれない 絶対にな


   俺には羽ばたく羽があるんだぜ?


   私は笑みを浮かべ奴を見ていた


 【おっと まだ甘い汁を頂いていないな】

俺は存分に飲みかけの缶じゅーすの甘い汁をなめさせてもらった


「あっま~いっ!みっくちゅじゅーちゅ 

  ちゃいこ~」   



      さらば 人間よ


しかし臭いけつの真ん中で俺の上にすわりやがって!


   「てめえにはこうだ!」と去り際に

   しょんべんみたいな液体をかけたった


    ぶぶぶぶぶぅぅ~ん ぶううう~ん

      羽の調子は今一つだが

   我が家に戻れる嬉しさからなのか


    「じょおおさまああぁぁぁ~!」


         と叫んだ






いっぽう アシナガバチに刺された男は病院に電話していた


「ハアハアハア す、すみません 蜂に刺されまして 私 蜂アレルギーなんです あなひぃらすき?ショック だ、大丈夫なのれしょうか?」


【何で 何でこんなところを… まだ皮だけでよかった…】



  「え?どこを刺されたって?」と看護師



     私は もじもじ した


      しつこく聞かれた



 「だから…えっと… それ必要ですか」



    「ええ」と冷めた看護師


       

        「…ま」



    「え?」と聞き返す看護師



       「…たま」


 「もう一度お願いします」しつこく看護師


       「金の袋!」


 「はあ?」大体わかっているであろう看護師


       「たま袋!」


「玉袋さん!冗談はよして!どこを刺されたの!」と声が震えたように聞こえた


  ぜってー確信犯や!わかってて言うとる!


  私は腹立たしさを覚えその勢いで叫んだ


      「いんぶー!!!!!」


     思いきっていってやった


     これで伝わらない訳がない


     山もないのにこだました


    いんぶー陰部ーいんぶー陰部ー




  だが携帯電話のバッテリーが切れていた…


    


        おわた…  



 

恐れ坂

  私は今まで 誰にも話していない秘密がある


       それを初めて口外する


     何故今まで口外しなかったのか?


        大した意味はない


     ただ 思い出したくはなかった


    話してはいけないようも感じた


 ひとつ断っておかなければならないことがある


   この恐ろしい体験を知ってしまう以上


     眠れない日が続くかもしれない


      同じ目に遇うかもしれない


   心臓の弱いかたは知らない方がよい


    全ては自己責任でお願いしたい…



      話は30年程前に遡る

    


    私は訪問販売の営業をしていた


 とはいっても 入社して数ヶ月しかたっていない


 私はその日 先輩と二人で各家庭を訪問していた


  当然上手くお客様と話せる訳がなかったが


  先輩の助けもあり辛うじて商談は成立した


「そう 落ち込むなって 結果的に成功したじゃないか」


「でも先輩がいなければ成立してなかったじゃないですか」


「そうかなあ 俺はそうは思わない あの中で
お客様は一生懸命 話してるお前の姿をみて 既に買おうと決めていた ただ いつまでも 説明してるから フォローしただけだ」


 「そんな 見ただけでわかるはずがないですよ」


「まあ とにかく経験を踏むことだ 自ずと答えがわかってくるよ」


    「そんなものなんですか?」


「ああ そんなもんだ  そうだ この近くに
豚カツ屋さんがある 昼からの仕事に備えて腹ごしらえするか」


    私と先輩は営業車でその店に向かい


       豚カツ屋についた


       「豚豚 勝与…」


「よく見てみな 豚の漢字の所に濁点があるだろ どんどん 勝つよ って読むんだ」


    「なるほど おもしろいですね」


「米と味噌汁はおかわり自由だ どんどん食べて昼からもどんどん稼ぐぞ」



 「あ~ お腹一杯だ 三杯もおかわりしたよ」
 と爪楊枝を咥えて言った



    「先輩 よく食べるんですね」


「おうよ! さあ腹ごしらえもしたし いこうぜ」と車に乗り込んだ


     「次はどこへ行くのですか?」


  「市外に行く まあ車で30分てとこだ」



道中の先輩の運転は安全運転で安心して助手席に乗っていられる 周りの交通状況に応じてスムーズに運転をこなしている 私はこの先輩のように

なりたいと思っていた 目標にするべき人物だ


   そして 独特のオーラも放っていた




私は先輩に教えてもらっていることに誇りに思いながら 車窓から行き交う車を眺めていた


大半は流れに沿った 走りを見せるドライバーが多い   

   だが中には乱暴な運転をする人もいる


「あのドライバーさっきから危ないですね 指示器も出さずに縫うように車線変更してますね」


「あぁ あの心理はわからないね 多分本能で動いてるから 物事の分別がつかないのだろう」


「なるほど てっきり こういうドライバー達は普段怒られっぱなして ストレスを発散してるのかなって… 勝つことがないから 車を何台も抜いて優越感に浸っているものだと…」



「アスリートだな一分一秒 競っているのか?

相手もいないのに?」と先輩は笑った



         「先輩」

                      

        「なんだ?」


「見てください さっきの車 あんだけ 他の車をあおっていたのに 怖そうな車にはあおらないですね 相手を選んで走行してますよ」


「おっ 本当だ 慎重にその車を抜いていったぞ 丁寧に指示器も出している」


「あら先輩 あの車 赤信号で追い付きましたね ちゃんと信号守るのですね」


「急いでも 結局 変わらないのが わからないのかね みたまえ あのドライバーの顔 機嫌悪そうだぜ」


「ほんとですね きっとうまく行かないのですね  なにかと…」


 「あらあら フライングだぜ せっかちだな」



 「見えない何かに追われてるみたいですね」



「あ そうだ話変わりますけど  隣の町行くのにトンネルがあるじゃないですか」



「ああ 恐坂トンネルだろ?それがどうかしたか?」


 「いや そのルートで行くのかななんて…」


 「そのルートでいくぜ 近いからな 何故だ?」 


  「あまり いい噂 聞かないですからね」



「あれか 霊が乗り移るって話だろ 有名な心霊スポットだってな それがどうした?」


 「避けたほうがいいかな なんて思います」



  「なにそれ? まさかビビってんのか?」
   と先輩は僕を一瞥した


 「ち、違いますよ ただ僕は霊感が強いから

  それで…」



「何が霊感強いだよ んなもの いるわけないじゃないか 馬鹿馬鹿しい」と鼻で笑った


「でも 僕は行かないほうがいいとおもいます
 昼からの営業 気になって僕が足を引っ張ってしまう恐れもありますからね」


「しょうがねえな わかったよ 迂回すりぁいいんだろ」と先輩は舌打ちをした


  先輩は意外にもすんなり承知してくれた

 強がりを言っていても少しは怖いのかもしれない



    

    先輩は少し機嫌が悪くなったのか

  
   穏やかだった表情が少し強ばっていた


     そしてそれは運転にも表れた


   少しずつスピードが上がってきたのだ


      

      怒っているのかもしれない

「せ、先輩わがまま言ってすいません」と声をかけた



  「……あ…ああ」とぶっきらぼうな返事をした



 私は先輩を見ると 先ほどに増して顔が強ばってい る そして 額には汗をかいていた 



  そして目の前の信号は赤に変わっていた


 停車している間先輩は 硬く握り締めた拳と

 せわしく足を揺すっている


  信号は赤から青に変わろうとしていたが


   先輩は信号を待たずに急発進させた


 私は驚いて思わず「先輩」と声を荒らげた


先輩は「…るせえ…だまっ…ろ!」と苦しそうに言葉を雑巾のように絞り出して言った


勘の鋭い私は 先輩は何かに取り憑かれていると思った 


先輩は益々車のスピードあげ 運転も荒っぽくなってきた  見境なく煽り始めた 怖そうな車も関係なく 煽り始めた 


先輩は呪文のように「…れ…まれ…さまれ…おさまれ…」と歯を噛みしめながら 繰り返していた


先輩は完全に憑依されていない 見えない敵と闘っている 頑張って欲しい 負けるな


   先輩はクラクションを鳴らし出した 


 そして先輩は「ううぅ ううぅ」と唸り声に変わっていった


  私の背中が急激に氷のように固まった


  完全に動物の霊に支配されているのだ


 先輩は頭をもたげて 目だけ 前を見ている

   目の下の くまが恐怖を増幅させた


     私はあることに気が付いた 


それは避けて通ってほしかった 峠 に差し掛かっていたのである  


    この先には 恐坂トンネルがある


   私たち二人は完全に誘い込まれたのだ


益々先輩はアクセルを踏み込んで峠道を上り始めた 私は霊的な恐怖と この暴走といえる車の運転にも恐怖を覚え 足を踏ん張っている


もうすぐ恐怖のトンネルだ霊気が私の体にもまとわり憑いているような感覚も覚えた


少し古典的なようにおもえるが 払い除ける言葉はこれしか思い浮かばなかった


   「なんまんだ~なんまんだ~」と



そして トンネルの中に入った 昼の良い天気だった 普通なら少々暗くても 怖くなんてないはずだ だがこのトンネルは違った

  薄気味悪いのだ  地面を蹴るタイヤの音は

     うめき声のようにも聞こえた


   トンネルを抜けるその時のだった


   先輩が白目をむき雄叫びをあげた


     「あああああぁぁぁ」


 私は驚愕のあまり「出た~!」と叫んだ


それとハモるように先輩も「出た~!」と負けじと叫んだ


    先輩は急ブレーキをかけた


  私は恐怖のあまり 数秒間 目を閉じた


 恐る恐る目を開けた 先輩の姿は横にはいない


異臭がしたそれと同時に先輩が藪の中に消えて行った…


 「くっさあああ~!あいつ もらしよった!」


      「くそが~糞があ~!」


「憑依したんちゃうかい!紛らわしいのぉ!」


   「あれは ガチの我慢うんこか!」


   「うざっうっざっ うざすぎる」

    「何がオーラを放ってる?」
   
  「糞の臭いを放っとるやないけ!」


  先輩は川で洗濯を すると どんぶらこ


 どんぶらこと うんちが流れて行ったとさ…




      めでたし めでたし



     この時解った事が2つある

    私に霊感なんで微塵もなかった

 気のせいと思い込みによるものだと判明した

        もう一つ


世のせわしなく煽り運転をしているドライバーたちは


        ほとんど全員

    
      うんちorおぴっこが

      爆発寸前なのである


      車に乗る際は必ず


    うんこ 前点検を推奨する