足長おじさん

     俺は普段温厚だと言われる


 だが身を守るためには仕方のない事だった


 こいつは痛みと苦しみからなのか 悶絶している


 そりぁ 勝手に入ったことは悪かったと思う


 窓が開いていたよ またとないチャンスだからな


    存分に甘い汁を吸う良い機会だ


  俺には絶対の自信があった 捕まらないと…


   しかしその おごりが 俺を苦しめた


  俺にとって前代未聞の出来事が起こった


 俺は窓から侵入した 人がいようがいまいが

お構い無しの俺だが この日は少し疲れていたこともあり 目の前の座布団に身を寄せた あまりにも気持ち良かった 俺はうとうとしていた


   そうとも知らず奴が俺に忍よった


    俺は苦しさと驚きで目が覚めた

       「しまった!」
    
      だがもう既に遅かった

   俺の体は身動き一つ取れなかった

 俺が持っている武器も押さえつけられ使えない

      ジタバタも出来ない

  意識が薄れていくぼんやりとした目の先には

とてつもなく大きな人物だ 夏場と言うこともあり 暑さが息苦しさを増幅させ しかもこの男のぬるっとした汗と体臭で鼻を突き刺した

  【こんなやつに太刀打ちなんて出来ない】

【俺はこのまま圧死するのだろう 仲間達よ 今までありがとう 皆の負担にはなるが俺の分まであの人のために頑張ってくれ…】 

   俺は既に涙と言うものをうしなっていた

    ただじっと死を待つのみだった

 昼間のはずなのに ぼんやりとし暗くなってきた

    外の色々な音も小さく聞こえる

   俺の体はなんだかふわふわしてきた

 【やっぱり もう少し頑張りたかったな…】

 と今更ながら 命乞いかと 笑みを浮かべた


      すると天に届いたのか

    奴のからだが少し浮いたのだ
   
   俺に再びチャンスが巡ってきた 

  薄れ行く意識の中 俺は渾身の力を込め


        奴を突き刺した 

  できることなら 突き刺したくはなかった 

     だが仕方のない 選択だった

 深く刺せなかったのは たまたま(玉玉) なのか 

    本能が躊躇させたのかはわからない


    奴は のたうちまわっている

      もがき苦しんでいる

       形勢は逆転した

俺はありとあらゆる体の機能が回復しているのを感じた


    奴は携帯電話で助けを呼んだ

   【呼べばいい 早く助けてもらえ】

  警察だろうが何であろうが私は捕まらない


       怪人20面相?

   
  申し訳ないが その上を遥かに越える  

      ばれない 絶対にな


   俺には羽ばたく羽があるんだぜ?


   私は笑みを浮かべ奴を見ていた


 【おっと まだ甘い汁を頂いていないな】

俺は存分に飲みかけの缶じゅーすの甘い汁をなめさせてもらった


「あっま~いっ!みっくちゅじゅーちゅ 

  ちゃいこ~」   



      さらば 人間よ


しかし臭いけつの真ん中で俺の上にすわりやがって!


   「てめえにはこうだ!」と去り際に

   しょんべんみたいな液体をかけたった


    ぶぶぶぶぶぅぅ~ん ぶううう~ん

      羽の調子は今一つだが

   我が家に戻れる嬉しさからなのか


    「じょおおさまああぁぁぁ~!」


         と叫んだ






いっぽう アシナガバチに刺された男は病院に電話していた


「ハアハアハア す、すみません 蜂に刺されまして 私 蜂アレルギーなんです あなひぃらすき?ショック だ、大丈夫なのれしょうか?」


【何で 何でこんなところを… まだ皮だけでよかった…】



  「え?どこを刺されたって?」と看護師



     私は もじもじ した


      しつこく聞かれた



 「だから…えっと… それ必要ですか」



    「ええ」と冷めた看護師


       

        「…ま」



    「え?」と聞き返す看護師



       「…たま」


 「もう一度お願いします」しつこく看護師


       「金の袋!」


 「はあ?」大体わかっているであろう看護師


       「たま袋!」


「玉袋さん!冗談はよして!どこを刺されたの!」と声が震えたように聞こえた


  ぜってー確信犯や!わかってて言うとる!


  私は腹立たしさを覚えその勢いで叫んだ


      「いんぶー!!!!!」


     思いきっていってやった


     これで伝わらない訳がない


     山もないのにこだました


    いんぶー陰部ーいんぶー陰部ー




  だが携帯電話のバッテリーが切れていた…


    


        おわた…