甦る過去の記憶
あれば数年前の話である‥
もうすぐやってくる!
あ~ワクワクすると時間がたたね~
でも一緒に歩んだ30年間寂しいなあ
と呟く親父
聞いていないふりをした俺は心の中で
たかが元号が変わるだけじゃねーか
そりゃ元号が変わって困る人はいるかもしれないよ 俺自身はミジンコのように微塵にも影響はない(実際ミジンコより塵の方が細かい) カレンダーや手帳は?別にええやん そのまま使えば
そんな平成の余韻に浸ってる親父はビールに浸りながら 平成最後の大晦日 除夜の鐘を撞きに行かねーか! よし行こう と一人で思いつき一人で決断した
いやいや誰もまだ返事してねーし
早速親父は親戚たちに連絡をした
あ もしもしあのさ 明日嵯峨の二尊院ってとこで しあわせの鐘を撞きに行くんやけど…ん?もう充分幸せ? 鐘撞いてどないするって?いや鐘を撞いて煩悩をやね ぼんのうを… そ、そうか 忙しいもんな じゃあ
あのさ二尊院ってとこで… ん?寒い?いや暖かい格好すればええやん 甘酒やホクホクのさつまいもとかも提供してくれるねんで
無料で!紅白みなあかんから無理?そ、そうか じゃあ仕方ないな
かわいそうにおもったか ばあちゃんと親父の弟夫婦は🆗の返事をくれた
俺の家族はお兄がくるくる回転する寿司屋のバイトがあるため行けなかったが 俺と母 は渋々参加した
大晦日当日の19時 に集結俺を含め総勢6名
7人乗りの車で二尊院へいざ!
車で一時間も掛からないので 途中の居酒屋でお酒を飲みながら時間潰し まあ盛り上がってるのは周りの客と親父だけ すっかり調子こいた親父は ここの居酒屋はな蕎麦を提供してくれるんやで 年越し蕎麦食おうやないか! なに蕎麦にする?
このざわついた居酒屋ではっきり聞こえた
親父以外 いらなーい と
賛成した親父の挙げた手は引っ込めることなく店員を呼ぶ手に変わった
狐につままれた表情をした親父は
き、きつね蕎麦 ひとつ と注文した
蕎麦を食べて気を取り直した親父は
さあ いよいよ 除夜の鐘を撞きにいこうじゃありませんか!と1人はりきり
車へ乗り込んだ
二尊院に着いたのは始まる一時間前 門が閉まっている
皆は やってないんちゃう?
あははは 俺は一度来たことがあって
毎年開催されているのは知っているんやわ
しかも ぐぐって 調べてあるから大丈夫やわ安心せい 23時45分開始やから まだ開かんやろ ほら人も増えてきたで~
でも 帰ってく人もおるで と叔父がいった
心配性やな 皆さん待てへんから暇潰しにどっかウロウロしとるんや
これも平成最後の除夜の鐘!我慢じゃ ちょっと待ったれい
さあ23時43分や開門するでICOCA!
はい45分なった!
闇のなかだけに 静まりかえっている
し~ん とも鳴らない
あれぇ 時計狂てる?
ばあちゃんが脇にある小さな門にある貼り紙をみて あんた去年から中止って書いてあるわよ
なあ親父 俺には聞こえていたぜ
心の鐘が!
ち~ん とね
帰りの車中の小さな画面で紅白歌合戦をみて年を迎えました
おやじはまだ知らない 平成最後は5月ということを…