お!ムレ 2!

俺の先輩はクレーマーだ

普段の仕事は完璧にこなす

其れゆえ 他のサービス業界の従業員の仕事ぶりを 逐一気にするのである


いつも俺達二人は一台の車で得意先を


一日中まわっている


休憩でコンビニエンスストアに行くときも


ご飯を食べに行くときも


絶えず文句をいっている


よく俺に この世の中を


「良くしていかにゃあならん!」 


はあ


あんたは神かなんかですかい?


言われた人は変なおっさん


としかおもってないのですが…


クレームの内容はこうだ

    
コンビニで


「温かいもんと 冷たいもん わけろや!冷めるやろ!ぬるなるやろ!」

「チョコレート溶けるやろ!」



「なんで箸やねん!カレーにはすっぷぅん!やろ」


「おい 順番まもれ!マナーやろ!
おい店員ちゃんと見とけ!」


「お湯がない!
どーやってラーメンくえっつうねん!」


「41番ちゃう!51番や!ラッキーストライクや!耳わるいんか!」

もはや暴言 ストライク投げられて空振りしとけ

「おいレジ並んどるやんけ 店員もう一人おるやんけ そいつもレジまわせ!さっさとせいっ!」


そんな私は真っ赤な他人のふり


だが他人のふりが出来ない状況もある



いつも行くガソリンスタンドだ


店員がオーライオーライと元気良く誘導


 「君 うるさ過ぎる!静かにせえ!」


別の日


店員が気を使ったのか少しトーンを下げ誘導


「おいっ!元気がない もっとはっきり言わんと!わからんやろ!」


     
僕と店員はテレパシーで心が通じたのか


『どっちやねん!』と突っ込んだ


昼飯を一緒に食べに行ったときもそうだ


席は空いている→ 駐車場が空いていない

駐車場もっと増やせと店員に言う

→飯くるの遅い!

→店員同士喋っとる

→店員呼ぶ

→注意する

「喋っとらんと はよ作れ!」


いやいや あの人達ウェイトレスだしっ!

料理人ちゃうしっ!


あるときは


「なにこれ?」


「し、塩ラーメンですが…」と店員


 「わしは味噌ゆーてん お味・噌!」


「も、申し訳ございません ただいま作り直します」


「あたりまえやんけ のう? 相棒」

と俺に同意を求めた

「 は‥はい」


俺は心の中で思いっきり叫んだ 


あじ音痴のあんたは塩でも味噌でも同じだろ!


はあはあ  言ってやった


心の叫びの音漏れもしていない


    せーーーーふ

「っくしょいっ!」と くしゃみをする先輩

びくつく俺

「ま~たわしの噂しとるなあ~」


『ああ てめえの悪口をな しかしびっくりした~』
  

俺はトイレにいくふりをして席を外した

さっきの店員の所にいき ごめんなさい堪忍してくださいと謝った


すると店員は心底いえ 私どものミスですからと満面の笑みで答えてくれた


俺は涙を浮かべた

か、神たいおー!


ま、負けた 完全に俺達の敗北だ


こんな笑顔で対応したことがない!


俺は今まで何をしていたのだ


完璧じゃないか!


この店員の対応を先輩にみせてやりてぇ


何がこの世の中をだ!


あんたが悪くしてるんやろ!


席に戻る俺


おい 相棒 この味噌ラーメン 


しょっぱくねえか?


まだ いう!文句!


このひと 


クレーマーでなけりゃあいい人なのに




そんなある日


茶店で昼飯をしたとき


先輩はカツサンドとカレーを注文


「よく食べますね先輩」


「おうよ 加齢に打ち勝つ!ってな」


    がはははははは


俺は苦笑いして ひくついた 顔面が…

先輩が座る椅子の下に落とし穴が細工してあったらいいのに‥  

そしてそのボタンを押しておとしたろかとおもた

        
相棒は何すんねん!

『はっ!』
  
「え、え~と それじゃあハムエッグと…」


 「おいっ! おまえ おちょくっとんのか!」


 「え? ど、どうしたんですか?」

「わしの前で たまご の話すんな」  


「す、すみません」


「い、いやわしの方こそすまん 取り乱してもうた」


「いえ 大丈夫です」 


「あ すいません 俺もカレーでお願いします」


いつもの俺なら聞き逃していた


だが今日は気になって気になって樹になった


「どうしたんですか先輩 びっくりしましたよ」


「いやあ すまん すまん じつわな
実話なんやけどな」


ちらっと俺の顔を見た


もーえーって おもんないから
俺はスピードランニングのように聞き流した


「で どうしたんですか?「」


「わしの家の壁にな 何者かが 生卵投げよるねん」


「生 たまごをですか?」


「そうやねん しかも一個ちゃうで1パック分や」


思わず もったいねぇ~


といいかけたが  


眉間にシワをよせて親身のふりをして


「酷いことしよりますね ゆるせないですね!」


「そやろ しかも デッキブラシで擦っても落ちひんねん  生たまごは たち悪い」 


「それで警察には知らせたんですか?」


「あかんあかん 報告しても 警察がこんなことで動くかいな」


「でも一応言っておいたほうがいいですね」


「そやな んでな それだけちゃうねん
それから またちょいちょい たまご投げよんねん」


びっくりしてないけど え~!


「しばらく夜更かしして 見張っとってん犯人捕まえたろおもて」


「そんなことして 刺されでもしたら 怖いですよ」


「あー大丈夫や そんな こすい やつ そんな根性あらへんて」


 「本当ですか? 気を付けてくださいよ」


と心配してないけど心配してそうな顔をした


「そやけど なかなか 出てきよらんねんタイミングあわんわ くやしいさけ ホームセンターで防犯カメラ買おーたんや スマホにもライブで見れるやつ
でもな操作わからんねん 見てくれへんか」


「いいですよ設定しましょう」
と興味津々だったので快く引き受けた



早速その日 先輩と一緒に先輩の自宅にいった

家の前で先輩が 「ちとまっててくれい」

「わかりました」  

「いま帰った」

と家のなかで説明の声が聞こえた 

し~ん

すると
「なあ あんた!酢買ってきてないやん
何しとんねん!使えんわー」

「酢、酢みません」


こんなときにもだじゃれに聞こえた


てか 奥さん怖え~

先輩が出てきた 強ばった顔で…


「お、おう 忘れもんや そこのスーパーに用事や ちといってくる まっといて」


  「先輩 俺買ってきます お酢…」

あっ! しまった 言ってしまった

聞いてたのがばれた!

「おいっ 聞いとったんか」

「はい 少し」

「何処からや!」

「いま帰った から…」

「全部やないか!」

「ま、まあええわ でも会社のやつには内緒なっ!」


「は、はいっ 口が裂けてもっ!」


そんなこんなで大したことのないカメラの設定がおわた 


「先輩 接続はされていましたから ここ一週間分録画されていましたよ」

「まじか! 5日程前にまた たまごやりよってん!」


「ははははは 犯 に~ん! 堪忍せえよ~」


「いきますよ先輩!」


3人で ドキドキ

3人で ハラハラ

じ~~~~

音は聞こえなかったが

ぴゅんと何かが写った

3人共

ん~? 

「もっかい見ますね」

ん~~?

「スローで見ましょう」

 ぴゅゆうううううぅんんんんん
 (スローの表現)


3人が口を揃えて  

 「卵?」


 3人共 首を傾げた…


 「先輩 た、卵だけが写ってますよ」


 「な、なぬっ!」

か、壁に向かってカメラ向けている‥

あ、アホなのか?‥

俺は設置の方向を修正してかえった


それからは卵の被害はなく結局犯人は写らなかった


平和な日々が訪れた


何事も無かったかのように鶯が美しく囀んでいる


春の風の香りが俺の心を落ち着かせている


俺が公園のベンチで休憩していると


スマートフォンから着信音がなった

ディスプレイを見るとISIHARAと表記されていた

あ、先輩からだ!

あれから月日が流れ 俺と先輩は今は同じ職場にいない

「もしもし!先輩!お久しぶりです!」


「あ、はい わかりました 近くにいるのですね!」


俺は久しぶりに先輩とあった



「あのさあ また 卵やられちまったよ」

「またですか!!」


「まあ見てくれよ」 

「あ! 中学生位の3人組!」 


「ああ 昔 家の前でタバコを吹かしてたガキんちょに注意したやつらだ」

「ああっ!卵を投げた!」

「ん?」

ケチャップも!?  

思わず吹き出した  いや なんなら

本気でわらってもた

「お、オムレツやん!」


それ以来 先輩とは連絡が取れなくなっていた…