怨魂(えんこん)

私は突然目を覚ました


蒸し暑い夜


暑さのせいか 私の体は汗で

ぐっしょり濡れている 


エアコンをつけるため 開いていた窓を閉めようとした 私は闇夜に稜線がくっきり浮かび上がる丹波富士を眺め


【今日は風が動かない そりゃあ 暑いはずだ】

と呟いた

私は新しいシャツに着替え 再び床についた

エアコンから出る風が安眠へと案内してくれた


  

雨上がりの水溜まりを踏んだ

他の水溜まりを避けようとしたが何度も何度も踏んでいる 

びちゃっ  びちゃっ と…

私は はっと 目を覚まし

「なんだ 夢か」と安心した


だが クーラーをつけていたにも関わらず

また少し汗をかいていた


私はディジタル時計に目をやり


私の拍動は少し驚いた


am2:22を指していたからだ


目が揃う時間はよくあり他愛もないことだが


何故かその時は背筋が凍り それと同時に

私がかいた汗は冷たさを増した


私はエアコンの温度を少し上げ 布団に転がった


頭の中の眠気スイッチの調子が悪いのか なかなか眠れない 

私は無理矢理寝ることを諦めテレビのスイッチを

押した


テレビのスピーカーからは女の悲鳴がした

【ぎゃああああ】

私も「いやあああああん」と両手で目をふさいだ

私は驚きテレビのスイッチを切った


サダコの再放送だった


ドラムを叩くように心臓が動いた


嫌なものを見た

【 ますます眠れないではないか】

すると外から


びちゃっ    びちゃっと音がする


私は はっと 窓の方をみた


すると窓の外から クスクスと笑い声がする


恐くなり 耳を塞ぎ


【気のせいだ 気のせいだ】
と自分に言い聞かせた


その不快な笑い声は収まり

動悸と息切れがやっと収まったと思った

その時である


またもや微かな笑い声とあの不気味な音が聞こえる


びちゃっ びちゃっ と…


同時に窓の上から どろっとした液状のものが

窓を伝い滴り落ちた


私は 恐怖に歪んだ表情をした

そう 目玉が飛び出しそうな程…


ふと

私は防犯カメラの存在を思い出した 


スマートフォンと連動しているため


早速確かめる事にした 小刻みに震える手は


正確に画面を触れることをゆるさなかった


そしてようやく画像を開くことができたのだが


玄関と車庫だけが映っているだけで


人や車が通った形跡は見当たらない


もう一度 その笑い声と奇妙な音がした時刻にあわせて 再生した


瞬きをせず 画面に穴が開くほど鋭く目を凝らした


「こ、これは」


私の腕は恐怖で総毛立った   



確かに映っている だがそれが何なのかは

見当がつかない  スローでもう一度見る


やはり同じことだった


なにかが 通りすぎている


早すぎて認識できない


これは果たして怨霊の仕業なのか


私はふと 隣の部屋で寝ている妻の様子が気がかりに思えた  私の予感は的中する


急いで妻の寝室のドアをあけた  

    
寝ているはずの妻がいない


私は【とみこぉ!】と叫んだ


急いで一階に向かって階段をかけ下り

リビングの扉を開けた

リビングの電気は消えていたが テレビはつけたままで 砂嵐の画像と音が恐怖を増幅させた

その下を見るとカーペットの上に妻が仰向けで倒れていた

私は妻のもとをかけより 叫んだ


「とみこぉ~!」(仮名)


それと同時に妻の遺体はゾンビのように 


上半身だけムクッと起き上がった


私はどこから声を出したのか

「ふぎゃあああああ~!」と叫び



妻に向かって走った足を急にブレーキをかけたおかげで 反動で足が滑り 宙に舞った 


しりもちをつき起き上がれない亀のように手足をばたつかせた


【じ、じぬぅ~】声が出なかった



「も~びっくりするやん!」と妻の声




「いやああああぁ! しゃ喋った!なんま~だむ なんま~だむ」と恐怖におののく私


「どないしたん あんた」


と嫁はんの覚めた表情と低いトーン


我に返ったわしは嫁はんに

「紛らわしいねん びっくりするやないけ!」

と声を荒らげた


わしの怒りの声を被せるように「何ゆーとんねん!私の方がびっくりするわい!」と言った


続けてガミガミ怒られた…


「お酒飲んで テレビ見て寝落ちしただけやないの!だいたいあんたはガミガミガミ…」


多分 文章にしたら1万文字位 文句と説教を


聞かされた



【お化けも怖いけど こいつも怖い…】


超能力者のように嫁はんが


「なんか言った?」



「いや な、何も言ってません ただ 外に


 怨霊が怨念 いや おんねん」


「何ゆーてんの? あほちゃうか 外になにがおんねん」と玄関へ行く頼もしい嫁はん


そして おかあちゃんの後ろからおどおどしながら続く 僕


(人間がちっちゃくなるにつれ妻への呼び方が変化) 


かあちゃんが玄関の扉を開け外に出た


続いて恐る恐る顔だけ外に出して周りを見渡した


何もなくホッとした私は強ばった全身の筋肉を緩めた


その時であるどろっとしたものが僕ちゃんの頭にのっかったのである


「いやああああぁ! ママたちゅちゅてぇ~!」


      《要約 ママ助けて》



冷静沈着で勇敢なママは

「あ、卵投げられてるしかも半熟…」


「なあんだ たまごか…」


「な、なんで~!」


  と怨魂(おんたま)の話でした



あとで思い起こすとこないだ近所の学校のクソガキ7人組にボロカス注意をした その逆恨みだろう イライラしながら外壁の掃除をした

たまごなかなか とれんやないけ~

クソガキ~クソガキ~ガキイ~イ~